彼岸の杜
清二さんのお母さんが言ってる娘って……難しく考えなくても誰だかわかる。きっと茜のことだと、わかってしまったことが嫌だと思った。
どうしてそんなこと言うの?あたしだって茜と過ごした時間はほんの少しだけだけどそんなこと言われる人じゃないってよくわかってる。
だって茜は見ず知らずの怪しい人に優しくしてくれる人だよ?行き場のない人を見捨てずに拾ってくれて嫌な顔せずに見守ってくれる人だよ?
あたしの話しをまっすぐに目を見つめて聞いてくれる人だよ?退屈していたあたしに気づいて気にかけてくれる人だよ?
あたしが瞳のことを褒めたらあんなに嬉しそうに笑う人だよ?あんなに慈愛に満ちたような表情を浮かべられる人だよ?
なのに、なんでそんな人を何かのゴミを見るような目で見て、そんな汚い言葉を言うの?
悲しくて辛くて、悔しくて腹立たしい。ぎゅっと握った拳が微かに震える。
ふつふつとお腹の中から熱いものがあふれてきてあたしこそ清二さんには悪いと思いながらも感情のままに言葉をぶちまけそうになった。
でもあたしがそうする前に清二さんが静かな、でも確かな憤りを含んで「母さん、」と口を開く。