彼岸の杜



なんだろうと思って清二さんの後ろからひょっこりと顔を出してみて目を輝かせる。



「うわぁ、綺麗!こんなところがあったんだぁ」



ちょっとだけ薄暗い森の中にあるのは小さな泉。ちょうどそこだけ植物がないからかスポットライトが当たってるみたいに光が差していてキラキラと光っている。


そして泉を彩るように周りには赤い彼岸花が咲き誇っていた。


うわーうわー!神社にあった彼岸花も初めて見たとき神秘的で素敵だなって思ったけどここのもすっごく綺麗だ。なんていうか、背景が!彼岸花だけじゃなくて泉とかこの光の当たり具合とかの全部が綺麗!


すごいですね!と興奮して思ったことをそのまま伝えようと清二さんの方に振り返り、その音は言葉にならなかった。


どうしてかと言われれば、驚いたというのもあるだろうしそういう雰囲気を出してたっていうのもあるんだろうけど、一番には見惚れてしまったからだと思う。


そりゃ清二さんはイケメンなご尊顔してるしいつも見惚れてるけど、そういう表面的なものしゃなくて、もっとこう……表情っていうのかな。表情から滲み出る感情?


…とっても優しい瞳をしてて、すっごく幸せそうな笑みを浮かべてて、醸し出される雰囲気が柔らかくて。なんだかちょっとだけ茜の空気に似てるかも。


全てを包み込んでくれるような、許してくれるような、そんな慈愛に満ちた表情で、触れるのをためらうような神秘的なものがある。





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