彼岸の杜



息を飲んで清二さんを見つめているとそんなあたしに気づいたのか「うん?」と小さく首を傾げる。ふわりとさっきまでの雰囲気が霧散した。



「いえ、なんでもないです!」


「そう?」



何かあったら言ってね、と穏やかないつもの表情を浮かべる清二さんに頷きつつ泉の方に目を向ける。


よくよく見ると泉はよく澄んでいて底の石が見えるくらいだ。さすがに魚はいないよね。でも綺麗…飲み水として使ってるのかな?あ、でも井戸あったか。



「ここ、綺麗でしょ?」


「はいっ、とっても素敵です!」



素直に笑みを見せれば嬉しそうな様子の清二さん。あぁ、はにかむ姿も麗しい…イケメン万歳!



「そう言ってもらえると嬉しいよ。僕たちにとってもここは特別な場所なんだ」


「僕、たち?」



たちってことは清二さんと……もしかして茜?


疑問がそのまま顔に出ていたらしく問いかけるようなあたしの視線に清二さんは肯定の返事をしてくれた。


そっか、よくわからないけどここって茜と清二さんにとって特別で大切な場所なんだ。言葉なんてなくてもあの清二さんの顔見ちゃったら納得せざるを得ないけどね。



でもそんな大切な場所にあたしがお邪魔しても良かったのかな?あたしだったらまぁ不可抗力ならともかくそういう場所ってあんまり人に教えたいとか思わないけど……






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