彼岸の杜



まぁそれは人それぞれだしあたしが深く考えることでもないんだろうけどね。でも気になってしまうのが人間の性だよね。むむむ、不思議だ。


懐かしげに目を細めて泉を見つめる清二さん。その瞳は確かに泉を見つめているけど、それは多分茜と特別だって言ってた頃のものを映しているんだろう。



「…ここは、僕と茜が初めて会ったところなんだ」



ぽつり、しばらく眺めていたかと思ったら不意にそう言った清二さんに思わず顔を上げた。


でもそんなあたしには目を向けずに清二さんはまた何かを思い出すように言葉を紡ぐ。



「ここで泣いてたんだ。一人で、本当に苦しそうで悲しそうで、思わず声をかけたんだ。それが僕と茜の出会い。そして僕が名前をあげた」


「名前を……?」



じゃあ茜って名前は清二さんがつけた名前ってこと?え、待って、それよりも名前をあげたってことは茜には名前がなかったってこと?


それがいつの話なのかはわからないけど2人って結構一緒にいる感じだし、え?あれ、どゆこと?


頭の中にクエスチョンマークが埋め尽くされる。これアニメとかで言ったら頭の上にクエスチョンマーク乗ってるんだじゃない?それくらい混乱中だ。



「名前に関しては僕と彼女の秘密だけどね」



ふわり、柔らかくそう笑った清二さんにあたしはまた首を傾げるのだった。






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