彼岸の杜
「食料を分けてもらうだけだから、うまく行けば数日で帰ってこれるはずよ」
「そっかぁ」
今日村を案内してくれたときも歩いて1日2日ぐらいって言ってたっけ。それぐらいなら明日の朝よりも帰って来てからお礼言う方がいいかな。旅立つ前でバタバタしてるだろうし。
それに何より今日あたしは清二さんの家の場所とか見た目とか知っちゃったけどそれと同時に清二さんのお母さんにも会っちゃったわけで。
清二さんのは申し訳ないけどさすがにもう一度あの人に会おうとは思わない。というか思えない。あたしの大切で大好きな人のことあんなに酷く言った人だもん。あー思い出したらもやもやする!
「どうしたの?」
「え、?」
何がと自然と下を向いていた顔をあげれば少し心配そうな茜がいて。
「眉間に皺寄っていたから、何かあったのかしらって思って」
大丈夫?と聞いてくる茜に慌てて頷く。うわっ、全然無意識だった。眉間に皺寄るとかどれだけだ。うー、不機嫌そうに見られたかな?いや実際そうとも言えるけど。
「なんでもないよ!それより茜は平気なの?」
清二さんってあたしの目から見ても茜の特別な人だし、毎日のようにここに来て話とかしてるから寂しくないかな。
「?何が?」
首を傾げる茜は本当にあたしの意図がわからないらしくて不思議そうにその緋色の瞳を瞬かせた。