彼岸の杜



「ね、茜。あれって?」



くるりとたまには遠回りをしたいというあたしの我が儘を聞いてくれた茜にそれを指さす。


あたしの指先の向こうにあるのはこちらとあちらの空間を断絶するように存在しているしめ縄で。


一応こんな身なりでも神社の娘だもん。しめ縄だって見慣れてるし特に珍しいものでもないけどなんとなく気になった。これが虫の知らせ?いや違うか。



「あれ、ってしめ縄のこと?」


「うん、そうだけどそうじゃないっていうか…」



そもそもなんであんな地味ぃーなところにしめ縄なんてものがあるんだろう。


というか見慣れてるとは言ってもそもそもしめ縄の存在意義を知らないというね。神社の娘だと主張しておきながら情けないけど興味なかったしそこまで知る必要性を感じなかったのだよ。



「あそこはね、神域なの」


「神域…?」



ってつまり神様のいる領域ってことだよね?読んで字の如く。


恐る恐るおうむ返しに言うあたしに茜は頷く。どうやらあの向こう側はこの神社の神様がいるところらしい。茜は前の神主さまに聞いたんだって。


へぇ、神様ねぇ…なんか信じてないわけじゃないけど科学技術が当たり前の時代に生まれてきたあたしにはなんとなく…なんて言うか、腑に落ちない?




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