彼岸の杜



「ん……」



ぼんやりと視界が開ける。あたりは暗くてまだ朝と呼ぶには早い、むしろ夜中と言った方がいいんじゃないかという濃い暗闇。


ほんのりとした月明かりが差し込んでいて部屋の中はうっすらと物がわかるぐらい。どうしたんだろ…今まで夜中に目が覚めるなんてことなかったのに。


それこそ小さい時はお漏らししても朝まで気づかなか、ってあたしの黒歴史何自分から暴露してんだ。寝ぼけてて思考がおかしなことになってる。


うーん、とぼんやりしたままの頭でごろりと体を反転させる。そこにはあたしのとは違う布団が敷かれていて。でもそこにいるはずの人はいなくて無人だった。



「茜…?」



トイレかなとなんとなく布団に手を入れてみるもののひんやりとしていて茜が布団を出てから時間が経っていることがわかった。


なんか胸のあたりがザワザワするというか…そわそわするというか…とにかくじっとしていられないような嫌な焦燥感みたいなものが胸に広がる。


あたしの考えすぎ、かな。でもそれを考慮に入れないとしても茜がどこかに行ったのは気になる。だって1人ってわかっちゃったのに寝るの怖いし!





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