彼岸の杜
夜独特のひんやりとした空気にぶるりと体を震わせながらも布団から抜け出し部屋を出る。一番可能性のありそうなトイレを覗いてみたものの茜の姿は発見できなかった。
夜中のトイレとか怖かったけど頑張ったのに!ここ電気もないから余計怖かったのに!幽霊出てきそうな雰囲気あるし!(失礼)
うーっ、トイレじゃないならなんだろ。眠れなくて外出たとか?この暗い夜にそんなことをするのか果たしてわからないけども。
一応と玄関に行くと草履がなくなっていた。まじか……茜さん今外にいるのね。いやなんでよ?!
なんてことは茜にしかわからないと思いつつ、なんとなくあたしも外に出る。戻ってもいいけどやっぱ怖いし…せめて戻れないかどうかだけでも聞いて安心しよう。逆に安心できないかもだけど1人よりは断然マシである。
どこにいるんだよう、と内心しくしくと涙を堪えつつぐるりと一周回り、不意に声が聞こえたような気がしてあたしはそちらに足を向けた。
確かこっち方向って清二さんに連れられた泉があったような…暗くていまいちよくわからないけど、月明かりがあたりを照らしてくれているので転ばない程度のものは見えた。
昔って現代に比べて空気が綺麗だからかな。月明かりもいつも見ていたものよりもずっと明るいような感じするんだよね。