いつだって、ヒーロー。


「…行ってらっしゃい」


お母さんのあたたかい声を聞いて、私はリビングを出た。


玄関で靴を履いて深呼吸。

このドアを開けると、いるんだよね?


私の好きな人。


会いたい人。


「行ってきます…!」


ガチャとドアを開ける。

ヒュウッと冷たい風がほっぺたを撫でた。


雪が舞い降りる夜の中、私の目に映るのは……ヒーロー。


息をするのもいちいちドキドキして、うまく言葉が出てこない。


「…今日すっげー寒いな」


どれくらいの時間ここで待ってたのかな?

ここに来てすぐに電話した?


「うん…」


「後ろ」


トントンと、自転車の荷台をたたく。

乗れ…ってことかな?

今からどこに行くんだろう。

なんて考えながら荷台にまたがる。


「これ、使って」


パサッと太ももにかけられたのは、宮城くんが着ていたコート。


「えっ…でも、宮城くんが…!」


今日は寒いねって…宮城くんが…。


「…風でスカートめくれるよ?」


なっ…!

バッとそのコートをかぶせる。

舌をベーっと出して、いじわるく笑う。



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