いつだって、ヒーロー。


「わり…。もう10時過ぎてる。親に謝んねえと…」


私のお家の前に着くとせかせかと自転車を止める。

ケータイの画面には、10:13と表示されてる。


「大丈夫…だよ?」


お母さんにもお父さんにもちゃんと言ったから、少しくらい大丈夫なのにな。


いつから私はこんなに欲張りになったのかなあ…もう。

次はきっと…年明けの始業式…だよね。


あと一週間と少し、会えないんだよね?

もうちょっとだけ…。


「危ねえから、な?」


「……うん」


冬の夜は不気味で家の前とはいえ、安心できない。


2人だとしても、もしも何かあったら宮城くんを困らせちゃうよね…。

荷台からおりて、玄関へと歩く。


やっぱり…ううん、ダメだよね。


「私から メリークリスマス」


ドアノブに手を掛けたとき後ろから『サンタが町にやってくる』が聞こえた。

振り返ると小さな袋を持った宮城くんがペロッと舌を出している。


「永倉、メリークリスマス!」


その小さな袋を無理やり私の手に握らせて自転車に乗る。

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