いつだって、ヒーロー。
「…青!おい!やめろ!!青落ち着け!!やめろって!」
異常な叫びと鈍い音を聞きつけた紫音が勢い良くドアを開けて俺に叫ぶ。
殴り続ける俺の腕を後ろから抑えて秋の体から引き離す。
無抵抗だった秋は床に咳き込みながら寝転がる。
口から血が出てるその姿は、夏祭りの日に伊藤朝陽に殴られた俺に似ていた。
「離せっ!!離せっ!!止めんな!紫音離せ!!」
「おい!青!お前何があったんだよ!これ以上殴んな!」
離せよ!
頼むから離せ!
じゃなきゃ俺……
殴る代わりにためていたものが溢れそうになるんだよ。
だせえだろ…んなこと。
「コイツがっ…!いずを傷つけたんだ!!苦しませたんだ!だから離せ!」
あの小さな体で、アイツは大きなものを抱え込んでたんだ。
なに一つ俺はわかってあげることもできなかった。
頭ん中はグチャグチャで、ただ殴ることしかできなかった。
助けてくれよ。
ううん、助けてやりたかった。
俺じゃない、いずを。
あの日のいずを助けることさえできれば今でも隣で笑ってた?
「……………………最低だよ」
すうっと一粒の涙が頬を伝った。