いつだって、ヒーロー。


「湊ーっ!!受験!受験頑張ってね⁉︎今日は勉強したっ⁉︎湊なら大丈夫だよ!」


「ちょ…抱きつくなよ。帰ってきて早々うるせーし」


玄関のドアを開けるなりローファーを脱ぎ散らかして湊に抱きつく。

顔は見えないけどきっと嫌そうな顔してるに違いない。


「はいっ!湊!湊の大好きなお菓子!チョコレートだよ!これで明日頑張ってね〜!」


湊の大好きなチョコレート。
少し高いやつ買っちゃった!!


「……泉、なんかいいことあっただろ?」


チョコレートを受け取りながら湊が笑う。


「お姉ちゃんって呼んでよ〜…」


湊は弟なのに『お姉ちゃん』って呼んでくれない。
それは昔から。
だって……


「俺よりチビだし」


もう!
そりゃ弟だけどもう中3だよ?卒業してるけどさ。
一個しか変わらないんだからさすがに抜かされちゃうじゃん!
170cmある湊になんてヒールを履いたって勝てない。

そんな理由で私を『お姉ちゃん』って呼んでくれない。


「青くん。のことだったりして」


「なっ………!!!」


一気に赤くなる顔。


「し、しーっ!」


湊の口を塞いで私の部屋まで引きずる。


私と青くんが付き合ってたことは湊もお母さんもお父さんも知ってる。

もちろん別れたことも。

だけど別れたのに青くんの話を昼ご飯を作ってるお母さんに聞かれるのも…ねえ?

私の部屋で今日のことを話す。


「へえ…良かったじゃん」


弟のくせにちょっとお兄ちゃんっぽい湊。
私の変化にすぐ気づく。
今日だってバレちゃったし。



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