いつだって、ヒーロー。


私がどれだけ目で追っても合うことはなくて。


もう付き合う前にも戻れないんだな。
友だちにも戻れないんだなって。


きっと青くんは北原くんから聞いたのかもしれない。
キスをされたことを聞いたのかもしれない。
ううん、北原くんがいいように言い換えて話をしたかもしれない。

たくさん考えても、何も動けなかった。

私はちっぽけだから。

勇気って身長と比例するのかな…。

『別れよう』

自分から言った言葉が重りになって。
この中途半端な場所から一歩も動けなくなった。

こんなじゃ嫌なのに。

結局は青くんを傷つけたのなかな。
『別れよう』の言葉でも真実の話をしてもどっちでも青くんを傷つけてたのかな。


そう考えちゃう。


だから何もできなくなって。


そんな時に

『バイバイ』

たったそれだけ。
こんな短い言葉が私は嬉しかった。

気まずくて無意識に青くんの近くを避けてたこと、気づいてるかもしれないのに。

あれからまるで他人のように話をしてないのに。



「俺は大丈夫だから」



そう言うみたいに優しく。

『バイバイ』って言う青くんの笑顔を見て、まだ知らないんだな…って思ったこと。今さら後悔してる。


違う。


青くんはそんな黒い人じゃない。


何もなくなった、白いまんまの私たちに色ができた。

それが淡くて見えにくいものだったとしても確かな色。


青くんが塗ってくれた小さな色。


絶対に汚さないように。
せめてこれくらいは汚さないように。


「ふーん。青くんってやっぱいい人だな。……つーか、腹減った。昼ご飯食いに行こうぜ」


……………はっ!!


そうだ!もうお昼ご飯!

私が長々と湊に話をしてる間にこんなに時間が過ぎちゃったんだ。

ていうか!


「湊ごめんねっ!勉強の時間削っちゃった…。明日なのに…」


「泉に言われたから朝ちゃんと勉強してたし大丈夫」


ふふ。
さすが我が弟。

話聞いてくれてありがとうね。

『青くんってやっぱいい人だよな』

当たり前だよ。

青くんはいい人。
だって、助けてくれたヒーローだもん。


時間削っちゃってごめんね。
だけど飽きずに聞いてくれて嬉しいよ。

湊が明日力を出せますようにっ!



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