いつだって、ヒーロー。
「えぇ〜っ⁉︎」
マヌケな声が体育館に響く。
嘘でしょ〜っ⁉︎
なんでなんでなんでっ…!
「離れちゃったね…」
体育館の壁に貼り出されたクラス替えの紙には、私と真緒ちゃんの名前は別のクラスのところに書かれていた。
「やだよ〜」
真緒ちゃんが教室にいないなんて無理無理無理っ!!
私はB組で真緒ちゃんはD組。
隣でもないよ…。
友だちできるかな…?
「あ……」
E組のところに書かれている
宮城 青
という懐かしい名前。
クラス…離れたんだ…。
寂しいというか安心というか…。
やっぱり寂しいの方が大きいや。
友だちと笑ってる青くんの笑顔を見れるのが同じクラスの唯一の特権なのに。
もう笑ってるかとか怒ってるとかわからないんだよね…。
「泉…?」
「ん?あ〜何でもないよっ!他誰かいるかな〜?」
出席番号1番から順に見ていく。
するとある名前で目が止まった。
「北原…秋…」
北原くんの名前があった。
同じクラス…なんだ。
あれから喋ることはなくて関わりもそんなになかった。
やっぱり教室にいるってだけで怖かった。
それでも何とかやってこれたのは真緒ちゃんがいてくれたからなんだ。
でも今日からは真緒ちゃんがいない教室。
大丈夫かな…。
ううん、頼ってばっかじゃダメだ。
北原くんのこと、まだ真緒ちゃんに言ってない。
何も知らない真緒ちゃんに助けてもらってばっかって、そんなのダメだよ。
よしっ。
「じゃあね、真緒ちゃん」
「うん、寂しいけど…」
4階まで一緒に上がってきた真緒ちゃんとバイバイする。
ガラガラっと教室のドアを開ける。
知らない顔、知らない顔、知らない顔。
いろんな中学から来てるだけあって、新しいクラスには知らない顔ばっかり。
中にはポツリポツリと知ってる人もいるけど、ほとんどが知らない人。
その中に北原くん。
もう友だちができたみたいで、楽しそうにお喋りしてる。
私はというと……。
人見知りなわけで、誰とも喋ることができないまま自分の席に座ってるだけ。