いつだって、ヒーロー。


「はい、席つけ〜」


8:30ちょうどにチャイムが鳴ると同時に先生が入ってきた。

今年の担任は教師2年目の若い先生で教科は現代社会。
話しやすくていつも笑ってて生徒からも人気。
苗字が松田だからって『まっつん』とか生徒に呼ばれてるけど、まっつんもまんざらでもなさそう。


今日の1時間目はロングホームルーム。
総合的な学習の時間。
そういえば今日のこの時間は文化祭の話だっけ。


「6月に行われる文化祭だが、まず何かやりたいことあるか〜?…ってその前に文化祭委員決めないといけないんだけど、やりたい人いるか?」


委員は2人。
やってみたいな〜…なんて思うけど、人見知りだし不器用だからやめておこうかな…。

で、でも、ここで手をあげなくて後悔したら…。


「は…はいっ…!やりたい…です…!」


気づけば手をあげていた。
一気に注目を浴びる。
恥ずかしすぎる…恥ずかしすぎる…!


「お〜じゃあよろしくな、永倉。じゃああと1人誰かいる?」


お願い誰でもいいから〜…。

なんて思ってると、はい。と誰かが手をあげた。


「俺やりまーす」


私はその人を見て後悔した。
やらなきゃよかったって。
手をあげなきゃよかったって。


「北原、やってくれるのか。案外早く決まったな。じゃあ永倉と北原前出て進行して」


確かに誰でもって思ったけど…。

北原くんはわかってるの?
あなたが私にキスしたこと覚えてるの?

私が手をあげたってわかって、北原くんは手をあげたの?

疑問だらけの頭の中を整理することもできないまま、私は教卓に向かった。

人見知りな上に隣には北原くん。
おまけにみんなの顔は私の方をむいてる。
うぅ………。わかってたけど…。


「何かやりたいことありますか?えーっと例えばステージなら劇とかスクリーン使うのもアリだし、喫茶店とか普通にお菓子を売るで店的なもんでもいいし」


なかなか喋れない私の代わりに北原くんはスラスラと話す。


「北原っ!俺、喫茶店やりたい!」


率先して言ったのは浜野くん。


「私はお化け屋敷〜」


「俺はステージがいい!」


「劇とかどう?」


浜野くんをきっかけにいろんな提案が次々と出る。




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