いつだって、ヒーロー。


…って思ってたのに。


「どうする?どれくらい売り物に使ってどれくらいデコレーションに使う?」


まさか放課後に北原くんと2人きりになるなんてっ…!

こんなの予想できたはずなのに。

楽しみだって気持ちが強すぎて、委員で居残りなんて忘れちゃってた…。


目なんて見れない。

ううん、違う。

見たくない。

北原くんのせいなんだもん…。

そう思っちゃうから。

北原くんのせいで別れたんだもん…。


それなのに北原くんは何もなかったみたいにクラスメイトとして、委員として話しかけてくる。


「どうすんの?予算内におさめないといけないんだけど」


「あ……う、うん……えーっと…」


明らかに動揺してる私。
ダメだよ…。

あれ以来言葉を交わしてなかったから久々すぎる会話。


「あのさ……まだ気にしてんの?」


なに………………それ……………。


「あんなの前の話じゃん?お前らだって別れたんだしもう関係なくね?」


わかってるよ…。

前のことだって、わかってるよ…。

だけど、それが原因なんだよ?

別れた別れてないをなしにしても、
好きじゃない人からキスをされるって悲しいんだよ…?


「ひどいよっ…!私はたくさん悩んだのにっ…。北原くんは簡単にできちゃうんだ…」


北原くんの余裕さがすごく嫌。


「そーだよ。簡単にできるよ。なんなら、もう一回する?」


向かい合わせに座る私のネクタイをグイッと掴んで顔を近づけてくる。

やだっ…怖い…!


「…もう青は来ないよ?」


今…聞きたくない名前なのに。

やめて…やめてよっ…!


「やっ…!やめてっ!」


北原くんを力いっぱい押して私は机に広がるプリントを全部かき集めてカバンに入れる。


「もう…いいよっ…!私がこれ考えてくるから…!北原くんは何もしなくてもいいっ…!ひどいよ…ひどいよ…!」


きっとわかってるんだ。

青くんの名前を出すと私が過剰に反応すること。

知ってるよ…私が青くんの名前を呼んでも、助けてほしいって願っても
もう来ないんだってことくらい。

私はもう好きじゃないから。
助けに来なくなって、そんなの当たり前だよ。

私は…願わないよ…。
自分で何とかできるから…。

今でも青くんに迷惑かけたくないもん…。



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