いつだって、ヒーロー。
通り過ぎて行く生徒には聞こえていない。
聞こえていたのは私と…
「泉……」
隣にいるつーちゃんだけ。
「あ…えと……」
何を言えばいいんだろう。
目をそらさない青くんに私は戸惑いまくりで。
「ちょっと………待ってて………」
それしか言えなかった。
ただ、このまま返事をしないわけじゃなくて。
「1時。1時に藤棚で待ってるから」
私に考える時間を与えるかのように、そう言ってお菓子をふたつ取って歩いて行った。
「あー…泉?」
気まずそうに、つーちゃんが私の名前を呼ぶ。
「今…抜けちゃダメかなあ…?」
すごく会いたい人がいる。
「ダメ。…………なーんて言えないよ!ほら行ってきなよ!真緒ちゃんのところでしょ?」
「つーちゃん、ありがと!」
「行ってらっしゃい!北原!あんた代わりに店番やって!」
代理が北原くんっていうのが腑に落ちないけど…。
ありがと、つーちゃん。
私は真緒ちゃんのところに走った。