いつだって、ヒーロー。



「真緒ちゃんっ!」


「ん?あーっ、泉!来てくれたの?」


一つ下階でお化け屋敷をやってる真緒ちゃんのクラス。
ちょうど受付は真緒ちゃんがやっていた。


「ううん…。あの…聞いてほしいことがあって…。でも、受付やってたら今は無理かあ」


真緒ちゃんのお仕事、邪魔しちゃいけないよね。
またお昼休みに来ようかな。


「バーカ。こんなの代わってもらったらいいの。泉が今来たってことは今話さなきゃいけないんでしょ?」


こんなときも真緒ちゃんは優しい。
だって代わってもらうってことは、その人の自由時間を削るってことだから。


「ごめん!ちょっと代わって!」


クラスの女の子に頼むと、快く引き受けてくれた。


「さ、階段行こ?」


私たちがあまり聞かれたくない話をするときによく行く階段。
屋上に繋がる階段で、屋上は立ち入り禁止だからほとんどの生徒が使用しない。


移動して私は真緒ちゃんに話した。
もちろん、青くんのこと。


「泉はどうなの?誘われて」


「誘われて…」


「嫌だった?」


「そんな…!…ただ、ビックリしたよ。別れてから何もなくて話だってしないのに突然だったから…」


少しはあった。
バイバイとか買い出しのときとか。

でもそんなのただの偶然。


たまたま下駄箱で会ったから。
たまたま買い出しに来てたから。


だけど今回は偶然じゃない。


『俺とまわろう』


青くんは私に言った。

それはたまたまじゃない。





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