眠らぬ場所で会いましょう
「はい、これだよね?」





積み上げられたダンボールの中からチョコを取出し、私に差し出す。





「うん。ありがと。」




チョコを手に取ったけど、手元に来ない。




見ると、まだ裕介が握ったままだった。





「退院の日、何でいなかったの?」




低い、静かな声に、吸いよせられる様に顔を上げた。




一つのチョコを二人で持ったまま、見つめあう私たち。





「…休みだったから。」





「はっ… そんなもんなんだ。」





「そんな事言ったって…」




理由もないのに、行けるわけないじゃない。





私の視線はドンドン下がり、彼のスニーカーを見てた。






やだ



マズイ





視界がボヤケてきた。






< 55 / 62 >

この作品をシェア

pagetop