強引社長の甘い罠
「だいぶ熱が高いようだね」
「……はい」
医師が椅子から立ち上がると、傍に待機していた先ほどの看護師が、紙袋から使い捨ての舌圧子を取り出して渡した。医師はそれを受け取ると身を乗り出して診察を始めた。
「はい、大きく口をあけて」
言われたとおり口を開ける。舌を押さえつけられる感覚に一瞬えづきそうになったけれど、何とかこらえることができた。
「あ~、真っ赤だね」
そう言って苦笑する彼は、きっと大人にも子どもにも、患者に人気があるに違いない。優しそうな笑みを浮かべている。
そして、布団がめくられ、心音を聞いたり、お腹を押さえたりと私が診察を受けている間中、祥吾はジッとその場から動かなかった。
今度こそ声を大にして抗議したいのに、診察している医師も、その場にいる看護師も何も言わないから、私も黙っているしかできなかった。どうして彼は当然のように私の診察の様子をジッと見ているの? いくら高熱で半ば意識が朦朧としているとはいえ、例え医者相手でも体を見られて触れられるのは恥ずかしい。ましてやその様子を、医者でもない祥吾に見られるなんて、恥ずかしいを通り越して怒りが沸いてくる。ますます体温が上がったように感じた。
「……はい」
医師が椅子から立ち上がると、傍に待機していた先ほどの看護師が、紙袋から使い捨ての舌圧子を取り出して渡した。医師はそれを受け取ると身を乗り出して診察を始めた。
「はい、大きく口をあけて」
言われたとおり口を開ける。舌を押さえつけられる感覚に一瞬えづきそうになったけれど、何とかこらえることができた。
「あ~、真っ赤だね」
そう言って苦笑する彼は、きっと大人にも子どもにも、患者に人気があるに違いない。優しそうな笑みを浮かべている。
そして、布団がめくられ、心音を聞いたり、お腹を押さえたりと私が診察を受けている間中、祥吾はジッとその場から動かなかった。
今度こそ声を大にして抗議したいのに、診察している医師も、その場にいる看護師も何も言わないから、私も黙っているしかできなかった。どうして彼は当然のように私の診察の様子をジッと見ているの? いくら高熱で半ば意識が朦朧としているとはいえ、例え医者相手でも体を見られて触れられるのは恥ずかしい。ましてやその様子を、医者でもない祥吾に見られるなんて、恥ずかしいを通り越して怒りが沸いてくる。ますます体温が上がったように感じた。