強引社長の甘い罠
明かされた過去
「え~! それじゃあ七海さんは例の元カレとうまくいっちゃったんですか?」
「ちょ、ちょっと皆川さん、声大きい……!」
二十三階のエレベーターホール横、自販機の前で私は慌てて人差し指を唇に当てた。皆川さんもすぐにそれに気づいて口をつぐむ。ここはホールからは死角になっているため、皆川さんは三歩進んでエレベーター前まで行き、周りに誰もいなかったことを確認すると、安心した笑顔を見せた。
「よかった、誰もいませんでした」
「皆川ちゃんの声は高くてよく通るからねぇ。内緒の話をするときは気をつけないと」
硬貨を投入し、紙パックのアイスティーのボタンを押しながら及川さんがチラリと皆川さんを振り返る。母親が子供にそうするように、愛情に満ちた眼差しで皆川さんをたしなめた。
「はあい……。ごめんなさい」
項垂れる皆川さんに私は微笑む。
「大丈夫よ。確かにあまり言いふらしたくはないけれど、絶対内緒っていうような話でもないから」
祥吾を思い浮かべながら慎重に言った。その元彼が祥吾だということがバレなければ問題はないはずだ。私が誰とどうなろうが、騒ぎ立てられるようなニュースにはならない。ただそのことで、聡についてあれこれ憶測が飛び交うのは歓迎できないから、できれば隠しておきたいというだけだ。もちろん、その相手が祥吾となれば話は別だから、そこだけは何としても隠しておかなければならないけれど。
「ちょ、ちょっと皆川さん、声大きい……!」
二十三階のエレベーターホール横、自販機の前で私は慌てて人差し指を唇に当てた。皆川さんもすぐにそれに気づいて口をつぐむ。ここはホールからは死角になっているため、皆川さんは三歩進んでエレベーター前まで行き、周りに誰もいなかったことを確認すると、安心した笑顔を見せた。
「よかった、誰もいませんでした」
「皆川ちゃんの声は高くてよく通るからねぇ。内緒の話をするときは気をつけないと」
硬貨を投入し、紙パックのアイスティーのボタンを押しながら及川さんがチラリと皆川さんを振り返る。母親が子供にそうするように、愛情に満ちた眼差しで皆川さんをたしなめた。
「はあい……。ごめんなさい」
項垂れる皆川さんに私は微笑む。
「大丈夫よ。確かにあまり言いふらしたくはないけれど、絶対内緒っていうような話でもないから」
祥吾を思い浮かべながら慎重に言った。その元彼が祥吾だということがバレなければ問題はないはずだ。私が誰とどうなろうが、騒ぎ立てられるようなニュースにはならない。ただそのことで、聡についてあれこれ憶測が飛び交うのは歓迎できないから、できれば隠しておきたいというだけだ。もちろん、その相手が祥吾となれば話は別だから、そこだけは何としても隠しておかなければならないけれど。