強引社長の甘い罠
ほんの数分間の休憩を終えて仕事に戻ろうとしたとき、ちょうどエレベーターから降りてきた鈴木課長に呼び止められた。
「あ、七海さん、ちょうどよかった」
「何でしょう?」
「資料室から取ってきて欲しいものがあるの。半年前に提案した美容クリニックの資料一式なんだけど、ちょっと素敵なパンフレットだったと思うのよね。今度のエステの件でも何か参考になるかもしれないと思って見ておきたいの」
「ええ、分かりました。私も見せてもらっていいですか?」
「もちろん。そのつもりでお願いしているのよ」
微笑む課長に私もにこりと笑みを返す。皆川さんと及川さんは自分のデスクへ戻っていき、私は一人で一つ下の階、営業部のフロアにある資料室へと向かった。
資料室へは階段を使った。昼間の営業部は人もまばらだ。外回りに出ている人が多いのだろう。開いていた入り口のドアから何気なく中を覗いてみると、営業事務の女性社員が三人パソコンに向かっている他は、奥のデスクに男性社員が二人、なにやら話しこんでいるのが見えただけだった。デスクパネルで仕切られた環境で仕事をするシステム開発室とは違い、営業部は入り口から部屋全体が見渡せるようになっている。当然、隣の席との距離も近い。
「あ、七海さん、ちょうどよかった」
「何でしょう?」
「資料室から取ってきて欲しいものがあるの。半年前に提案した美容クリニックの資料一式なんだけど、ちょっと素敵なパンフレットだったと思うのよね。今度のエステの件でも何か参考になるかもしれないと思って見ておきたいの」
「ええ、分かりました。私も見せてもらっていいですか?」
「もちろん。そのつもりでお願いしているのよ」
微笑む課長に私もにこりと笑みを返す。皆川さんと及川さんは自分のデスクへ戻っていき、私は一人で一つ下の階、営業部のフロアにある資料室へと向かった。
資料室へは階段を使った。昼間の営業部は人もまばらだ。外回りに出ている人が多いのだろう。開いていた入り口のドアから何気なく中を覗いてみると、営業事務の女性社員が三人パソコンに向かっている他は、奥のデスクに男性社員が二人、なにやら話しこんでいるのが見えただけだった。デスクパネルで仕切られた環境で仕事をするシステム開発室とは違い、営業部は入り口から部屋全体が見渡せるようになっている。当然、隣の席との距離も近い。