強引社長の甘い罠
初めのうちは、何とか事情を聞きだそうと頑張った。祥吾に連絡を取ろうとそれまで以上に必死になった。だけど相変わらず電話は留守電にしか繋がらないし、当然返事もこない。社内で鉢合わせることもなく、それどころか会社へ出勤してきているのかどうかすら、私は知らない。祥吾のマンションへも何度も足を運んだけれど、全て空振りだった。こうなると、今もあのマンションに住んでいるのかどうかすら、わからなくなってくる。
私の足はますます歩くことを拒否し始めた。会社から出てたった数歩のところで立ち止まってしまう。深い溜息をついた。ダメだ……やっぱり何か理由をつけて断ってしまおう。
駅へ向かうため、くるりと踵を返した。
「うわっ……!」
私が体を反転させると頭上から慌てた男性の声がした。続けてぶつかりそうになった体を支えるためか、私の両肩に手がぐいと添えられる。
「……ったく、何やってるんだよ。ぶつかるところだったじゃないか」
「……あ、聡」
私がぶつかりかけた相手は聡だった。日に当たって彼の髪が茶色に輝いて見える。呆れたように私を見下ろす切れ長の瞳には、憐憫の情もよぎったようにみえた。
私の足はますます歩くことを拒否し始めた。会社から出てたった数歩のところで立ち止まってしまう。深い溜息をついた。ダメだ……やっぱり何か理由をつけて断ってしまおう。
駅へ向かうため、くるりと踵を返した。
「うわっ……!」
私が体を反転させると頭上から慌てた男性の声がした。続けてぶつかりそうになった体を支えるためか、私の両肩に手がぐいと添えられる。
「……ったく、何やってるんだよ。ぶつかるところだったじゃないか」
「……あ、聡」
私がぶつかりかけた相手は聡だった。日に当たって彼の髪が茶色に輝いて見える。呆れたように私を見下ろす切れ長の瞳には、憐憫の情もよぎったようにみえた。