強引社長の甘い罠
「あ……」

「何?」

 聡が声を出したので、そのまま今度は聡を見上げた。すると彼が微笑む私を見て嬉しそうな顔をした。

「いや……」

 そう言って言葉を濁した聡は、相変わらず私を見つめたままだ。何だか視線が逸らせなくなって居心地が悪くなってくる。すると及川さんがニヤニヤと意地悪な眼差しを私たちに注いだ。

「何、どうしたの。何だか二人、いい雰囲気じゃない。もしかして……元サヤ?」

「えっ!」

「へっ?」

 聡と私が同時に声を上げ、及川さんを見る。皆川さんが「ええ~!」と叫んだ声がやけに大きく聞こえてしまった。

「ちょ、ちょっと、何言ってるんですか。そ、そんなわけないですよ」

「お、動揺するところを見ると、ますます怪しいな~」

「怪しくないですってば。ちょっと聡、聡からも何か言ってよ!」

 自分で言っても説得力がないと判断した私は、聡に助け舟を求めた。すると聡は少し考える素振りを見せた。
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