強引社長の甘い罠
奥の部屋を抜けると寝室がある。主寝室の他にもう一つ。ここに来たとき私は広い主寝室を使うつもりだった。だけど気が変わった。
主寝室の隣にある部屋のドアを開けた。ここでも私には広すぎるくらい。ベッドはダブルベッドだし、テレビにソファーだってある。私はここで寝る。祥吾が佐伯さんと使うつもりだった部屋なんて使いたくない。彼は今夜、このホテルで佐伯さんとディナーの予定だったのだ。
不運なことに、私が駅で倒れたりなんかしたから祥吾が呼び出される羽目になり、ディナーは中止となった。そのため不要になってしまった食事と部屋を、彼は私にあてがったのだ。これ以上、祥吾に手間をかけさせないために。
だったら用意されていたのがこんなに贅沢な部屋であるのも理解できる。佐伯さんは――今となっては祥吾もだけれど――上流社会の人間だから。
ベッドに転がり体を押し付けた。ほどよい弾力のマットレスが私を受け止める。さすがスイートルームだけあって、寝心地の良さそうなベッドだった。このベッドなら、どんなにひどい状態にある今の私でも簡単に眠ることが出来そう。
目が痛くなってきた。ぱちぱちと瞬きを繰り返すと涙が零れた。すぐにそれは洪水のように決壊を超えて溢れ出す。そしてやがて嗚咽に変わった。祥吾がドアの外で聞いているかもしれない。そう思ってなんとか声をこらえようとしたけれど、我慢ができなくなっていた。
必死に枕に顔を押し付けた。どうして祥吾は変わってしまったのだろう。あの時私に『心配ない』と言ったのは嘘だった。彼は結局、佐伯さんを選んだのだ。私ではなく、洗練された大人の女性で、祥吾と同じ目線で物を見ることができる彼女を。
その夜私は、部屋はおろか、ベッドから一歩も出ることなくいつの間にか眠りついてしまっていた。子供みたいに泣きながら。子供みたいに丸くなって――。
主寝室の隣にある部屋のドアを開けた。ここでも私には広すぎるくらい。ベッドはダブルベッドだし、テレビにソファーだってある。私はここで寝る。祥吾が佐伯さんと使うつもりだった部屋なんて使いたくない。彼は今夜、このホテルで佐伯さんとディナーの予定だったのだ。
不運なことに、私が駅で倒れたりなんかしたから祥吾が呼び出される羽目になり、ディナーは中止となった。そのため不要になってしまった食事と部屋を、彼は私にあてがったのだ。これ以上、祥吾に手間をかけさせないために。
だったら用意されていたのがこんなに贅沢な部屋であるのも理解できる。佐伯さんは――今となっては祥吾もだけれど――上流社会の人間だから。
ベッドに転がり体を押し付けた。ほどよい弾力のマットレスが私を受け止める。さすがスイートルームだけあって、寝心地の良さそうなベッドだった。このベッドなら、どんなにひどい状態にある今の私でも簡単に眠ることが出来そう。
目が痛くなってきた。ぱちぱちと瞬きを繰り返すと涙が零れた。すぐにそれは洪水のように決壊を超えて溢れ出す。そしてやがて嗚咽に変わった。祥吾がドアの外で聞いているかもしれない。そう思ってなんとか声をこらえようとしたけれど、我慢ができなくなっていた。
必死に枕に顔を押し付けた。どうして祥吾は変わってしまったのだろう。あの時私に『心配ない』と言ったのは嘘だった。彼は結局、佐伯さんを選んだのだ。私ではなく、洗練された大人の女性で、祥吾と同じ目線で物を見ることができる彼女を。
その夜私は、部屋はおろか、ベッドから一歩も出ることなくいつの間にか眠りついてしまっていた。子供みたいに泣きながら。子供みたいに丸くなって――。