強引社長の甘い罠
「先輩に雑用を頼まれた」
「あはは。しょうがないよね、頑張って」
「おう」
良平が白い歯を見せて笑う。そのとき、私が何となく眺めていた外国人観光客の男性のポケットから、キラリと光る何かが落ちた。
「あ……」
「どうした?」
「あ、ううん。ちょっと待ってて」
私は小走りで駆け寄って、その光るモノを拾った。それは女性物の時計だった。日本のメーカーのずいぶん昔の限定モデルだ。上品なピンクゴールドで花をモチーフにした文字盤がとても可愛く、私も欲しかったけれど手に入らないものだからと何度も雑誌を見ては溜息をついていたのを思い出す。
「時計か?」
すぐに追いついてきた良平が、私が手にしたものを覗き込んで言った。
「うん。あの人が落としたみたい」
私は数メートル先を歩く、外国人観光客を指した。彼は時計を落としたことに気づいていないらしく、どんどん先へ行ってしまう。
「良平、ごめん。私、先に行くね。これを渡してこないと」
「ああ、うん。わかった。また連絡するよ」
「うん! 今日はありがとう。ランチも美味しかったし、楽しかった!」
良平がにっこり笑うのを見てから、私は時計を落とした男性を追いかけた。何年も前の時計なのに新品のようにキレイだった。この時計の持ち主は、これをとても大切にしていたのだろう。それにこれは女性用だ。きっとこの時計を落とした人にとっても、とても大切なものであるに違いない。
私は時計を握り締めるとその男性に走り寄って声をかけた。
「あはは。しょうがないよね、頑張って」
「おう」
良平が白い歯を見せて笑う。そのとき、私が何となく眺めていた外国人観光客の男性のポケットから、キラリと光る何かが落ちた。
「あ……」
「どうした?」
「あ、ううん。ちょっと待ってて」
私は小走りで駆け寄って、その光るモノを拾った。それは女性物の時計だった。日本のメーカーのずいぶん昔の限定モデルだ。上品なピンクゴールドで花をモチーフにした文字盤がとても可愛く、私も欲しかったけれど手に入らないものだからと何度も雑誌を見ては溜息をついていたのを思い出す。
「時計か?」
すぐに追いついてきた良平が、私が手にしたものを覗き込んで言った。
「うん。あの人が落としたみたい」
私は数メートル先を歩く、外国人観光客を指した。彼は時計を落としたことに気づいていないらしく、どんどん先へ行ってしまう。
「良平、ごめん。私、先に行くね。これを渡してこないと」
「ああ、うん。わかった。また連絡するよ」
「うん! 今日はありがとう。ランチも美味しかったし、楽しかった!」
良平がにっこり笑うのを見てから、私は時計を落とした男性を追いかけた。何年も前の時計なのに新品のようにキレイだった。この時計の持ち主は、これをとても大切にしていたのだろう。それにこれは女性用だ。きっとこの時計を落とした人にとっても、とても大切なものであるに違いない。
私は時計を握り締めるとその男性に走り寄って声をかけた。