強引社長の甘い罠
同じ女を想っていなければ、彼とはもっと違う関係を築けていただろう。ビジネスにおいて彼のような男は必ずいい働きをする。だが、俺は彼とそんな理想的な関係は築けないこともわかっている。俺が唯を諦めない限り、もしくは彼が唯を忘れないかぎり無理なのだ。そして前者が決してありえないことは明らかだ。
「単刀直入に聞きます」
井上が開いた両膝の上に拳を置いた。
「ああ、どうぞ」
ソファにもたれて脚を組んだ俺はくつろいだ姿勢だ。だけど彼が唯を取り戻そうとしたら俺は冷静でいられるだろうか。
「今日、七海さんが……いえ、プライベートな話ですからいつもどおりに呼ばせてもらいます。さっき鈴木課長に聞きました。唯がしばらく会社を休むそうですね」
「そのようだね」
俺は何でもないことのように返事をした。彼の瞳が鋭くなる。
「とぼけないでください。鈴木課長が教えてくれましたよ。課長は僕と唯のことを知ってますから、僕が食い下がったら内密にってことで話してくれました。社長の指示だそうですね。いったい何がしたいんですか? 課長も困惑してましたよ」
「僕にその理由を聞きにきたのか? 僕が話すとでも?」
「単刀直入に聞きます」
井上が開いた両膝の上に拳を置いた。
「ああ、どうぞ」
ソファにもたれて脚を組んだ俺はくつろいだ姿勢だ。だけど彼が唯を取り戻そうとしたら俺は冷静でいられるだろうか。
「今日、七海さんが……いえ、プライベートな話ですからいつもどおりに呼ばせてもらいます。さっき鈴木課長に聞きました。唯がしばらく会社を休むそうですね」
「そのようだね」
俺は何でもないことのように返事をした。彼の瞳が鋭くなる。
「とぼけないでください。鈴木課長が教えてくれましたよ。課長は僕と唯のことを知ってますから、僕が食い下がったら内密にってことで話してくれました。社長の指示だそうですね。いったい何がしたいんですか? 課長も困惑してましたよ」
「僕にその理由を聞きにきたのか? 僕が話すとでも?」