強引社長の甘い罠
第三章
決断
何とか定時の十八時で仕事を切り上げた私は、私のアパートの最寄り駅近くにある、古びた喫茶店で聡を待っていた。
今日これから話す内容を考えると、とてもお酒を飲みながらという気分にはなれない。私はなるべく静かで落ち着ける店を選んだ。
ここは駅から徒歩数分という距離にありながら、昭和の時代を反映しているようなその外観と内装が、この時間の客足を緩やかにしていた。
朝やランチタイムは付近のサラリーマンや主婦で賑わうらしいが、夕方のこの時間に訪れる客はほとんどなく、たまにいてもそれはマスターの知人がほとんどだった。
今日は幸いなことに、客はまだ私だけのようだ。
私は窓際の席に座り聡が来るのを待ちながら、淹れたてのエスプレッソを口に運んだ。私の心を映し出しているような苦さが喉を通り過ぎていく。
やがて約束した時間である十九時を少し回った頃、聡が慌てて店に入ってきた。
「ごめん、唯! 遅くなった」
はあはあと息を切らしている彼は最初に運ばれてきた水を一気にぐいと飲むと、私と同じエスプレッソをオーダーした。
忙しいのは充分分かっているから、そんなに慌てなくても大丈夫なのに、と私は思わず頬を緩める。
「大丈夫だよ、まだ七時を少し過ぎたくらいだし。聡が忙しいのは分かってるから」
「でも、唯を待たせたことに変わりはないからね」
聡がふっと目元を和らげる。間もなく運ばれてきたコーヒーを彼は一口啜った。
「それで、話というのは……」
彼が話を切り出した。
私が話があると言って彼を呼び出したのに、心構えが出来ていなかったのは私だろうか。
私はビクリと肩を強張らせる。
手に持っていたコーヒーカップをカチャリと音を立ててソーサーに置いてしまった。
「う、うん……」
今日これから話す内容を考えると、とてもお酒を飲みながらという気分にはなれない。私はなるべく静かで落ち着ける店を選んだ。
ここは駅から徒歩数分という距離にありながら、昭和の時代を反映しているようなその外観と内装が、この時間の客足を緩やかにしていた。
朝やランチタイムは付近のサラリーマンや主婦で賑わうらしいが、夕方のこの時間に訪れる客はほとんどなく、たまにいてもそれはマスターの知人がほとんどだった。
今日は幸いなことに、客はまだ私だけのようだ。
私は窓際の席に座り聡が来るのを待ちながら、淹れたてのエスプレッソを口に運んだ。私の心を映し出しているような苦さが喉を通り過ぎていく。
やがて約束した時間である十九時を少し回った頃、聡が慌てて店に入ってきた。
「ごめん、唯! 遅くなった」
はあはあと息を切らしている彼は最初に運ばれてきた水を一気にぐいと飲むと、私と同じエスプレッソをオーダーした。
忙しいのは充分分かっているから、そんなに慌てなくても大丈夫なのに、と私は思わず頬を緩める。
「大丈夫だよ、まだ七時を少し過ぎたくらいだし。聡が忙しいのは分かってるから」
「でも、唯を待たせたことに変わりはないからね」
聡がふっと目元を和らげる。間もなく運ばれてきたコーヒーを彼は一口啜った。
「それで、話というのは……」
彼が話を切り出した。
私が話があると言って彼を呼び出したのに、心構えが出来ていなかったのは私だろうか。
私はビクリと肩を強張らせる。
手に持っていたコーヒーカップをカチャリと音を立ててソーサーに置いてしまった。
「う、うん……」