強引社長の甘い罠
囚われているのは私だけ
このビルの二十三階のフロア全ては、私が所属するシステム開発室が占めている。エレベーターを降りると廊下を挟んで南側がオフィス、北側は会議室と倉庫だ。
オフィスは広々とした一つの空間だが、エレベーターに近い側がクリエイター部門、奥がプログラミング部門と二つに分かれていて、両者の間に間仕切りはない。
私はクリエイター部門に、聡はプログラミング部門に席を置いていた。
「七海さん、用意できた?」
「はい」
「じゃあ行きましょ。今日は営業の第一会議室ですって」
及川さんがノートと筆記用具を片手に私を急かす。私も手帳とボールペンを握り締めて彼女の後について行った。
先日、聡が話していた、新社長が持ってきたという仕事の件で、私たちはこれから会議だ。営業部はこのフロアの一つ下の階、二十二階になるので私たちは階段を使った。
廊下を隔てて北側にある“第一会議室”のプレートがかかっている部屋のドアを開けると、空いた席に腰を下ろす。白い会議用テーブルが十台ほど、二列に並んだその部屋には、聡も来ていた。私に気づいてこっそりウィンクなどしている。
「井上くんも呼ばれているのね」
そんな聡を見ながら、及川さんがニヤニヤした笑みを浮かべた。
いくら私と聡の仲が周知の事実だと言っても、ここは職場なんだから目立つことは避けて欲しいのに。私は聡を軽く睨みつけた。
「そうみたいですね」
「あら、聞いてなかったんだ?」
「だって聞くもなにも、私がここに呼ばれることになったのだって、今朝知ったぐらいですから。及川さんだってそうですよね? 聡だって今日知ったんじゃないですか?」
「それもそうよね。あはは、忘れてたわ。でもまぁ、井上くんなら呼ばれて当然でしょうね。ちょっと大きな仕事らしいし」
「……そう、ですね」
オフィスは広々とした一つの空間だが、エレベーターに近い側がクリエイター部門、奥がプログラミング部門と二つに分かれていて、両者の間に間仕切りはない。
私はクリエイター部門に、聡はプログラミング部門に席を置いていた。
「七海さん、用意できた?」
「はい」
「じゃあ行きましょ。今日は営業の第一会議室ですって」
及川さんがノートと筆記用具を片手に私を急かす。私も手帳とボールペンを握り締めて彼女の後について行った。
先日、聡が話していた、新社長が持ってきたという仕事の件で、私たちはこれから会議だ。営業部はこのフロアの一つ下の階、二十二階になるので私たちは階段を使った。
廊下を隔てて北側にある“第一会議室”のプレートがかかっている部屋のドアを開けると、空いた席に腰を下ろす。白い会議用テーブルが十台ほど、二列に並んだその部屋には、聡も来ていた。私に気づいてこっそりウィンクなどしている。
「井上くんも呼ばれているのね」
そんな聡を見ながら、及川さんがニヤニヤした笑みを浮かべた。
いくら私と聡の仲が周知の事実だと言っても、ここは職場なんだから目立つことは避けて欲しいのに。私は聡を軽く睨みつけた。
「そうみたいですね」
「あら、聞いてなかったんだ?」
「だって聞くもなにも、私がここに呼ばれることになったのだって、今朝知ったぐらいですから。及川さんだってそうですよね? 聡だって今日知ったんじゃないですか?」
「それもそうよね。あはは、忘れてたわ。でもまぁ、井上くんなら呼ばれて当然でしょうね。ちょっと大きな仕事らしいし」
「……そう、ですね」