強引社長の甘い罠
「ごめんね、待たせちゃって。遅かった?」

「いえ、そんなことは全然いいんですけど、それより……」

 皆川さんは良平が消えた廊下の先をチラリと見た。

「七海さんの周りってイイ男ばっかですねぇ」

「え?」

「相模さんですよ。ルックスもいいし、そのうえ海外勤務だなんて。きっとすごくモテるでしょうね」

「あー、確かにモテてたかも」

「ですよねー。これだけイイ男に囲まれて過ごしてたんだから、七海さんの忘れられない元彼って人もきっとめちゃくちゃイイ男なんでしょうね! 会ってみたいかも!」

 楽しそうにはしゃぐ皆川さんに悪気はない。
 その相手が祥吾で、私がどんな思いで彼のことを考えないようにしているかなんて、彼女は知らないから。私は曖昧に微笑んだ。

「そうね」

 皆川さんは「きゃー」と甲高い声をあげると、やや興奮状態に陥ったようで、席に戻ってからも、及川さんに良平のことを嬉々として話し続けた。

 おかげで私は彼女に合コンの話を断りそびれてしまった。

 皆川さんが話している間、私は何となく店内を見回して良平を探したけど彼の姿はなかった。多分、個室で飲んでいるのだろう。
 良平の姿が見えないからか、皆川さんが語る良平の『素敵さ』はかなり割り増しされていて、私は笑ってしまった。
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