強引社長の甘い罠
 祥吾はドアを開け中へ入ると、腕を私に差し出した。そのまま抱き寄せるようにして私の体を支えると、もう一度舌打ちをした。私の額に右手を当てている。

「いつからだ?」

 聞きながら彼は私を抱き上げると靴を脱ぎ、大股で部屋の中へ入っていく。キッチンを抜けた先の部屋、ベッドの上に私を寝かせるとそっと布団を掛けた。

「……土曜日は……元気だったじゃないか。いつからこうなんだ?」

 厳しい表情で私を睨む。
 どうして私は彼に怒られないといけないの? そんなこと、祥吾には関係ない。でも……だめ。今はそんなことで反抗する元気もない。

「……昨日から」

「病院は?」

「……まだ」

 途端に彼の顔がさらに険しくなった。

「まだだって? 悪化させたいのか?」

 祥吾が立ち上がった。私は不愉快な表情を隠さず、横になって布団をかぶったまま彼を睨みつけた。

「だって……昨日は休みだったもの。今日、これから行こうと思ってたところよ」

「……保険証は?」
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