強引社長の甘い罠
 私があっさりその申し出を受け入れると、祥吾の目が少し見開き、驚いているのが分かった。私が抵抗するとでも思っていたのだろうか。でも当然だ。私でさえ、どうして素直に彼に甘えようとしているのか、不思議でならない。

 すぐに彼は安心した笑みを見せた。私の頬が熱いのは、本当に熱のせい?
 祥吾が立ち上がった。私もベッドから足を下ろして座ると、彼が用意してくれたTシャツとパンツを手に取った。ちらりと祥吾を見上げる。

 彼は片眉を上げて「どうした?」とでも言いたげだったけれど、私が手にしているものを見てすぐに理解したようだ。不満そうに眉根を寄せたが、やがてひとつ頷くと、隣のキッチンへと消えた。

 私は急いで着替えようとした。祥吾が戻ってくる前に着替えてしまわなければ。けれど、熱のせいで体が思うように動かない。着替えを済ませるだけなのに、ひどく時間がかかった気がした。
 だけど祥吾は心得ていたらしい。私がのろのろと着替えている間、ずっとキッチンから戻って来なかった。そしてやっと着替え終えて、脱いだパジャマを手にしたところで、彼が戻ってきた。手には水の入ったコップを持っている。

「喉は乾いてる?」

「うん、カラカラ……」

 私はコップを受け取った。ずっと寝ていて熱も高くて、私の体は水分を欲している。私はゴクゴクとコップ一杯の水を全て飲み干した。

「もう一杯持ってこようか?」
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