約束という名の鍵
時雨が差し出した手を見て楓は微かに目を見開いた。
「どうしたの? 手を出して?」
「え…あ、うん」
楓はおずおずと時雨に手を差し出した。
「これで今、この瞬間僕と楓さんは約束で結ばれた。
この約束は楓さん本人が終了を告げるその日まで変わらない」
時雨は楓の手を握り、目を見てそう言った。
楓は時雨が何を言ったのかわからずにキョトンとしている。
「それは何?」
「僕なりの誓いの言葉だよ」
約束をするたびに時雨はこの誓いの言葉を言っている。
そんな仰々しい言葉は必要ないのではないか、と言われたことは何度かあった。
けれど、このセリフは約束を必ず守るという、自分自身の誓いでもあるのだ。