約束という名の鍵
「あっ、ちょっと待てよ時雨!」
「待てよ!」
時雨は目を据わらせ、無言で席を立った。
男子たちから引き止める声が聞こえるが、無視してズンズンと歩を早める。
(次の授業はサボろう……)
そんなことを考えつつ屋上への道を歩いていると、一人分の足音が追いかけてきた。
「よっ、モテ男」
そう言って時雨の肩に手を置いたのは光だった。
「何がモテ男だ。男にモテても嬉しくねーよ」
「ハハハ。で、本当のところどうなんだよ」
「何が」
「夜森さんとだよ」
光はニヤニヤしながらそう聞いてきた。