約束という名の鍵


店員が右手で示した方には制服と同じオレンジ色に塗られたベンチがあった。


(あれ? 何かこのベンチ見たことがある?)


時雨は始めて見たはずのベンチに既視感を覚えた。


しかし、気のせいだろうと時雨はその考えを頭から追いやった。


時雨と楓は勧められたベンチの方にずれてクレープを待つ。


「楽しみだね」


「えぇ。どんな味がするのか楽しみ」



他愛のない会話を二、三したところで呼ばれた。

「八百二十円になります」


「じゃあこれで」


時雨は千円を財布から出して店員のお姉さんに渡す。


「え、悪いわ。
自分のくらい自分で払うわ」


「いいよ、誘ったのは僕だし」


「でも……」


「もう払った。はい」


時雨はにっこり笑ってクレープを差し出す。


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