剣華
 幸い髭面は道場主ではなかったので、道場自体に影響はないが、師範代辺りの者が門下生の前で負けたのだ。

 しかも俺は、一切手加減しなかった。
 竹刀が折れるほど、完膚なきまでに叩きのめした。
 こいつの自尊心を、粉々に砕いたわけである。

 恥をかかされたことを根に持って、後日闇討ちをかけることなど、よくあることだ。

「お蔭で破門になった。どちらにしろ、このままではあの道場にはいられないがな」

「知ったことかよ」

 この髭面が道場から締め出されようが、禄を失おうが、俺には関係ない。
 くだらないことに付き合う気はないのだ。

「待て! ここで再び立ち会え! 断ることは許さん!」

 ずい、と髭面が迫る。
 もとよりそのつもりだったのだろう、暗がりから、二人が走り寄ってきた。

 初めから連れていた男と、破門になってもこいつについてきた門弟であろうか。
 小柄な男と、女のように細い若者だ。
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