剣華
 俺の右腕から血が飛んだ。
 だが二の腕を浅く斬られただけだ。

 俺は髭面の脇を駆け抜けざま、後方にいた小柄な男に突っ込んだ。
 男は再び礫を打ったが、先程確かめた限り、礫は単なる小石だった。

 俺は左手で礫を防いだ。
 最悪突き刺さっても、大した傷にはならない。

 礫を防がれ、小柄な男は焦ったように匕首を構えた。
 だが持っているのは左手だ。

 こいつの武器は礫が主なのだろう。
 利き手で構えていない匕首など、恐れるに足らない。

 そのまま俺は、先程髭面を斬った刀を、袈裟に斬り下ろした。
 男が小柄なだけに、俺の刀は首根から胸元まで、ざっくりと入った。

 一瞬身体の断面が見えた。
 次の瞬間には、勢いよく血が噴き出す。
 鼓動に合わせて血を撒き散らしながら、男はゆっくりと倒れ込んだ。
< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop