いつかきっと越えるから
幼馴染みとの再会
あれから約三年~<高校二年生のページ>

「憂~お昼たーべよ♪」

「沙紀! うん、いこ♪」

現在一学期が始まりました

秋森沙紀とは親友です

ずっと同じクラスで、このようにお昼も一緒に食べます

「さっきーずるーい! 俺も憂と一緒に食べる~」

「ひゃっ」

沙紀に文句をいいながら、彼は私にハグしてくる

「見せつけんなリア充★」

「お~さすがさっきー・・・殺気たってるなぁ♪」

「私と憂の一時の休息を邪魔すんな!」

「いやーん♪俺だって憂と一緒に食べたいわぁ♪」


そう

このちょっと変な感じの人は、私の彼氏なんです

少し性格は変なところもあるかもしれないけれど、イケメンの彼氏です

彼の名前は奥山抬我

たいがは去年の三学期に転校してきた

その時偶然隣になって、よく話すようになったらコクられて、別に断る理由もなかったしOKした


「別に一緒でもいいよね、憂♪」

「憂~たまには断ってよ~」

二人の懇願するような表情が似ていて面白く、つい笑ってしまう

「まぁ別にいいんじゃないの?断る理由もないじゃない」

「いや!! こんな気持ち悪い男の半径十メートル付近にはいたくない」

「さっきーの俺への言い方がひでぇ!」

「さぁー憂! 逃げるぞ~」

「あっ」

「憂~(ToT)」


悲しそうな顔の抬我を置いて、沙紀は私をつかんで教室の外へ逃げ出した




「まぁ、屋上ならあいつ来ないら!」

「あは。抬我君、高所恐怖症だしね」

屋上へ続く階段を登りながら会話をする

「ちょ、ちょっと憂! あんな奴に君付けてんの!?」

「う、うん。やっぱりまだちょっと、ね」

「ふーん・・・彼氏なのにねぇ・・・キスもしてないし、あいつは不満かもねー」

「ちょ、ちょっと、沙紀! ///」

「ふふーん♪そろそろそっちもOKしなきゃ、あいつ暴れだすかも・・・ってあ!」

「あ・・・扉開いてる」


いつもなら鍵がかかって閉じているはずの屋上への扉は、今日は少し開いていた

「あっちゃ~あいつのせいで一番手取られた」

「人のせいにするのは良くないよ」

「いんや! あいつはどの星に行っても、どの宇宙に行っても、ゴミ虫扱いされて罪を着せられるんだ」

「もぉ~一応だけど、私の彼氏なんだよ?」

「わーかってるって! それよりほら、あいつだ一番手」


ドアを開いて真正面に見えたのは、男の子らしき座っている人影だった

「ちょっと! あれ寝てない?」

「え?」

言われてみれば、そうも見えるような・・・

「今私の手の中には、油性のペンがあります。くく。さぁどうするでしょう?」

「百%落書きしようとしてますね」

「はい、正解~♪」

沙紀は私が止める間もなく、素早くそぉっと慎重にターゲットに近づく

「さ、沙紀!」

「しーっ」

人差し指を口前でたてたあと、その指でペンのキャップをはずす

「あ、あ、ああ」

私は呆れたようにしゃがみこみ、ターゲットが起きないうちに早く書き終えることを祈った






「ただいまー♪」

「さーきー・・・」

「あっはは・・・もう次からはやんないよ・・・さぁ! 食べようではないか!」

自分のやったことを笑ってごまかし、さっさとお昼を食べ出す沙紀

・・・この者の脳みそに、反省という文字はなさそうだ





「ご馳走さま~♪」

「沙紀、食べるの早い」

「憂が遅いの☆んじゃ私はトイレ行ってくるよ」

「うん」


そう

私は体は大きめのわりに食べるのは遅い

・・・中学から、何一つ変わっていないんだ・・・


「うん。憂はまだまだガキみてーだなー」

「きゃあっ!?」

急にすぐ後ろからテノールボイスが聞こえた

振り向くとそこにはー

「あはっ・・・あははははっっ!!!変なの~」

・・・多分、さっきから屋上にいた人だと推測される

沙紀に書かれたであろう、いろんな落書きの数々に、私は吹き出さずにはいられなかった

「・・・人の顔見て急に笑い出すなよ」

気の毒な彼はげんなりした顔で私を見る

「だ、だって、おかしっ!あははは」

「いい加減にしろよ、憂!」

《憂》

懐かしい響きがする

そう思ったら自然に笑いが止まり、胸が苦しくなる

この響きの声を出す人を、私は一人しか知らない・・・






「・・・かな、と?」





「うん!」

私が名前を呼ぶと、昔のように無邪気に笑う彼の姿がいとおしかった(顔がなんか黒いけど)

よく見ると、彼は昔と同じ茶色の瞳で私をずっと見ていて(周りはなんか変なことかいてあるけど)、照れ臭いときに耳たぶをいじる癖も変わらなく(耳にまでなんか書いてあるけど)、昔のように明るく笑うその笑顔(バカとか書いてあるけど)は私の胸になにか細工をしてくれたようで・・・

心臓が押し潰されそうで苦しいのに、それ以上に胸の辺りが熱くなってくる

そしてそれは体全体に広がり、目から形となって溢れ出てくる

「かなどだっ! がえってきだ!!」

「おぉ! こんなとこで会うなんて思ってなかったけど、憂は相変わらずだな」

「うん! がなともがわってない!!」

「・・・うん。本当に嬉しいんだけどさ、一旦鼻かもうか」

「うん、うん」

懐からティッシュを取りだし、チン、とかむ

「こっち戻ってきて、やっぱ一番に会うのはお前だと思ってたんだよ!!」

「ほんとぉ?」

「はは・・・鼻真っ赤」

「奏与のせいだもん」

「・・・うん」

「この滴も奏与のせいだもん」

「うん?(さっきから流してる、この滝のような涙のこと?)」

「笑いすぎてお腹いたくなったのも奏与のせいだもん」

「おい待てこら! それは俺のせいじゃなくて、さっき俺の顔になんか書いてきた女のせいだぞ」

「沙紀だもん!」

「あぁ、あのクラスメイトの・・・」

「・・・・・・」

「ん?ちょっと待てやこら。何で引いてるんだよ!」

「その記憶力、マジウザす★って思って」

「・・・久々に会ったのにさぁ、何でそんなことで引かれなきゃなんないわけ?俺ってなに?めっちゃくちゃ悲しい人だよ」

「え?奏与って悲しい人だったの?」

「・・・お前のせいでな」

「? なんで? どゆこと?」

「もーとにかくお前帰れ! 教室もどれ!」

「な、なんでっ!?せっかく会えたのに!!」

「あぁ。お前のせいで俺の最高の気分ががた落ちだ」

「え?」

「・・・//と、とにかくだ! さっさともどれ!」

「でも、沙紀の分が・・・」

「一緒に持ってけ、ほれっ!」

「ひゃっ!」

奏与の大きくなった手に全部持たれ、そのまま連れ出されて校舎内に閉め出された(!?)

「奏与・・・」

「憂~どした~?」

沙紀が戻ってきたけど、安心したのか、その場で力が抜けて座り込んでしまった

「だ、だいじょぶっ!?」

「う、うん・・・てもすこ、し・・・時間っ・・ちょーだい?」

「・・・うん」

・・・沙紀は泣き出してしまった私の隣にそっと座り、私が泣き止むまでずっと背中を撫でてくれていた
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