色恋 〜Colorful Loves〜
「………な、分かっただろ?


お前は大バカだって」






真下で佐藤がにやりと笑っていた。




あたしはなんだか気まずくなって、唇を噛んで俯いた。






「だから、ここでは死ぬな、って言ってんだよ。


俺だって、真上の住人が飛び降り自殺なんかしたら、寝覚め悪りぃからな。


死ぬんなら、誰にも迷惑かからん方法で勝手にどっか遠くでやってくれ」







佐藤はそれだけ言って、灰皿で煙草を揉み消すと、ベランダの奥の方へ消えていった。




しばらくして、がらがらぴしゃり、という音。





どうやら佐藤は、部屋のなかに戻ったらしい。






ここまでのやりとりが、佐藤が煙草を一本吸う間にも満たなかったとは、なんだか拍子抜けしたような気分だ。





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