色恋 〜Colorful Loves〜
YELLOW - 月光の囁き
《月光の囁き》
*
「………きれいな月」
障子窓の向こう、濃紺の夜空に、目を瞠るほど黄色い満月が浮かんでいた。
夜は浅く、月はまだ低い。
あまりにも大きく、くっきりと浮かび上がった月は、この手につかめそうな気がした。
でも、私にはできない。
なぜなら、私はこの部屋から出ることなど許されないから。
この身に天女の羽衣を纏って、空に舞いあがることができればーーー
「………ふふ。はかない夢ね」
自分の子供じみた空想に、自然と自嘲的な笑いが洩れた。
障子一枚隔てただけの外の世界は、私にとっては、あまりにも遠い。