色恋 〜Colorful Loves〜
「清月さま」



華やかな色墨絵に彩られた襖の向こうから、囁くように私を呼ぶ声が聞こえてきた。



「お客様のお見えでございます」



「ええ、分かったわ」



私は小さく答えて、障子を閉める。

美しい満月は、もう見えない。


身丈の倍ほどもある長さの、豪奢な大花柄の真紅の打掛の裾を踏まないように、私はゆっくりと立ち上がった。



一歩一歩と足を踏み出すたびに、薄い金板が無数についた髪飾りから、しゃらりしゃらりと音がする。



歩きながら、前で留めた金絹の帯を整え、鏡台の前に腰を下ろした。



半刻ほどもかけて丁寧に施した化粧に崩れがないかを確かめ、簪をさしなおす。



漆塗りに縁どられた丸鏡の中からこちらを見つめ返す私は、息を呑むほどに美しかった。



男なら誰もが固唾を飲んで目を奪われるほどに。




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