色恋 〜Colorful Loves〜
滑らかな手触りの綾織の覆いを鏡に掛け、金銀の糸が織り込まれた錦織の座布団に座り直して、今宵の客を待つ。



しばらくすると、廊をこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。


案内役の女の衣擦れの音、それと、男の足音が二人分。



足音の重さから、年配の男と年若い男のものだと分かった。



「失礼いたします」という控えめな声とともに、襖がゆっくりと開いた。



「旦那さま、お久しゅうございます」



私が床に手をついて迎えた相手は、私を贔屓にしてくれている大店の造り酒屋の主人、葦原さまだ。



「清月太夫よ、顔を上げておくれ」



余裕のある落ち着いた声音に目を上げると、葦原さまの背後に、ずいぶんと見目うるわしい、身なりの良い若い男が立っていた。




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