色恋 〜Colorful Loves〜
「私はこの誠一郎どのが幼い頃からよく知っていてね。

利発で素直で、決断力も行動力もある、すばらしい子だったよ。

それで、昔からずいぶん目をかけて、可愛がってきたのだ。


誠一郎どのが音羽屋を継いだら、あの店はもっと大きくなるだろう。


だからこそ、早く一人前の男になってほしいと思って、ここへ連れて来たのだ。

清月太夫よ、よろしく頼んだぞ」




「かしこまりました。謹んでお引き受けさせていただきます」




私が深々と頭を下げると、葦原さまは一つ大きく頷いて、部屋の外へと出て行った。



私は音羽さまのほうへと身体を向け、



「ようこそいらっしゃてくださいました、音羽さま」



と笑いかける。



すると音羽さまは、



「………誠一郎、と呼んでください」



と答えた。




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