色恋 〜Colorful Loves〜
「そちらの吸い口に口をつけて、煙を吸うのです」



誠一郎さまは私の言うままに吸い口をくわえ、思いきり息を吸い込んだ。



「………っ!?」



次の瞬間、誠一郎さまが大きく目を見張り、ごほごほと激しくむせた。



「なっ、なんだこれ!? 煙たい、苦い、苦しい!」



目をまんまるにして煙管を凝視している様子が、あまりにも子どもっぽくて、私は思わずぷっと噴き出してしまった。



誠一郎さまがちらりと私に目を向ける。


私は慌てて笑みを消し、「申し訳ございませんでした」と床に両手と額をついた。



客を笑うなど、許されない行為だ。


でも、誠一郎さまは気にした様子もなく、「いえ、こちらこそすみません」と言った。



「せっかく頂いた煙草なのに、うまく吸えなくて………」




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