色恋 〜Colorful Loves〜
「…………ど、どうして?」






あたしがちょっとびくびくしながら言うと、佐藤は手に持っていたモノをずいっと差し出してきた。






「………なにこれ」





「見たら分かるだろ、酒だよ酒」






佐藤が持ってきたのは、500mlの缶ビール、五本。





訳が分からず顔を上げると、佐藤がにぃっと笑った。






「まぁ、これもご縁、ってやつだからな。


話くらい聞いてやるぞ?」






ぼさぼさ頭によれよれのスエットを着た佐藤は、明るいところで見ると、なかなか整った顔をしていた。




………いや、そんなことはどうでもいいんだけどさ。







「今日はつまみがなくて困ってたんだよ。


お前の自殺話、酒の肴にさせろよな」







…………でも、やっぱり嫌なやつだ。






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