色恋 〜Colorful Loves〜
鏡の中のあたし。




疲れて青ざめた顔をしている。





髪は寝乱れてぼさぼさ。




肌は乾燥してぱさぱさ。





ぼんやりと自分の顔を眺めながら、あたしは握りしめていた口紅の蓋を開ける。




昨日の夜、裕がプレゼントしてくれた。




いつもの真っ赤な口紅。





くりだしてみると、毒々しいくらいの赤が現れた。





鏡を見つめながら、ゆっくりと唇にルージュを滑らせる。






ーーーまったく似合ってない。




地味な顔立ちのあたしには、こんな鮮やかな赤は似合わない。





あたしは自嘲的に小さく笑って、手の甲でぐいっと唇を拭った。






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