色恋 〜Colorful Loves〜
今時、シングルマザーなんて大して珍しくもない。




昔みたいに大仰に驚かれることも、露骨に白い目で見られることもない。




まぁ、陰でなんて言われてるかは分からないけど。



いや、そんなこと考えるのはやめよう。



気が滅入るだけだ。




18歳で父親のいない子供を生んだ若い女が、近所からどんな目で見られているのかなんて、考えないほうがいい。




私は小さく頭を振って気をとりなおし、いつものように入り口に置いてあるカゴを取ろうと、ほとんど無意識に手を伸ばした。





そこで、「あ」と小さく声を洩らしてしまった。




いつものオレンジ色のカゴがない。



ちらりと顔を上げると、あたしのすぐ前に店内に入ったおばさんが、腕にカゴをかけて野菜コーナーに歩いていった。




あれが最後だったんだ。




私は空になったカゴ置き場を見て、さてどうしよう、と思った。





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