色恋 〜Colorful Loves〜
「あっ、すみません!

カゴ、なかったですか」





申し訳なさそうな声が後ろから聞こえて、私は振り向く。




そこには、大学生らしい若い男の店員が立っていた。




手にはホウキとチリトリを持っていて、店先の掃除をしていたんだな、と思った。




腕まくりをした袖口から、よく引き締まって筋の浮いた腕が覗いている。





「すぐ持ってきますね!

少しお待ちください」





店員さんははきはきとした口調で言って、ぱたぱたとレジのほうに駆けていく。




私は「ありがとう」と声をかけようと思ったけど、なんとなくタイミングを失ってしまった。





店員さんはすぐに戻ってきて、10個ほど重なったカゴを置き場に置き、それから一番上のカゴをすらりと抜き取った。





「すみません、お待たせいたしました」





そう言って、直接私にカゴを手渡してくれた。





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