色恋 〜Colorful Loves〜
「え……?」





驚いて目を見張っていると、長谷川くんは照れたように少し頬を赤くして、「いえ、あの」と口ごもる。





「あなたはいつも名前で呼んでくださるのに、俺のほうは『お客さま、お客さま』って呼ぶのは、なんかフェアじゃないというか………」





「えっ、フェ、フェア?」






意外な言葉に、私は首を傾げた。






「いえ、あの、だから………なんか申し訳ないな、と思って。

というか、俺が個人的に、ちゃんとお名前でお呼びしたいな、なんて。


………差し支えなければ、教えてもらえませんか……?」






私は戸惑いながらも、「片瀬です」と名乗った。




長谷川くんがぱっと笑顔になり、「ありがとうございます!」と言った。





その日はそんなにたくさん買ったわけじゃなかったのに、長谷川くんは荷物を車まで運んでくれた。




そのことをまるで特別扱いみたいに感じてしまった自分が、やっぱり恥ずかしかった。






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