オオカミくんと秘密のキス
「そ、そんなに大事な物なのに…私なんかが使ったら悪いよ」

「いいのいいの!いつか使うって言ってもどうせ使わないんだし、こういう時に使うのが一番いいんだって♪それにサンプルって小さいけど、物はちゃんとした商品なんだからこういう大事な日に安い化粧品使うよりはいいでしょ」


多美子ちゃんて…絶対主婦に向いてるよね…

高校卒業したらすぐ結婚して、子供とかたくさん産みそうだな。






「ほらさっさとやるよ!沙世ちゃんはそこに座って!」

「う、うん」


私は多美子ちゃんの部屋のベッドに座り、一からメイクをやってもらった。そして数時間後…







「どお?」

「いいじゃん!♪」

「沙世ちゃんすっごくかわいいですっ」


メイクを終えた私に3人が群がって来る。恐る恐る鏡を見てみると、いつもの自分とは少し違う顔が写っていた…





結構塗っているにも関わらずすごくふんわりとした雰囲気になり、クール顔の私がいつも頑張ってもたどり着かない顔がそこにはあった。

自分に自信を持てたわけじゃないけど、これだと怖く見られない自信は持てた気がする…








「多美子ちゃんすごい!プロだね」

「まあね♪雑誌とか読んで日々メイクの研究してるんだから!」


確かに…よく見ると多美子ちゃんてメイクすごくうまいもんね!

雑誌とか見てるからそんなにうまいのか…私もこれからメイクの研究しようかな♪







「髪もこんな感じでいいかな?季節的は上げた方がいいと思ったんだけど、今日の沙世の服だと緩めに巻いた方がいいと思ったんだけど」


私の髪を担当してくれた春子が、多美子ちゃんに仕上がりを見てもらっている。


いつもはストレートにしている長い髪を、春子はコテで巻いてくれた。ちょうどいいウェーブの髪がなんだか大人っぽく見えて、とても特別感がある。






「いいんじゃない?♪沙世ちゃんにすごく似合ってるよ」

「良かった~」

「2人共ありがとう!」


私は春子と多美子ちゃんにお礼を言って、少し体を伸ばした。







「沙世ちゃん!プレゼントのハンディクリーナーをラッピングしてみたんですけど …どうでしょうか?」


すると寧々ちゃんが、ラッピングした箱に入ったハンディクリーナーを私に見せてきた。





「え!これ寧々ちゃんがやってくれたの!? 」


ラッピングは可愛らしいものではなく、とてもシンプルだった。けれど男の子に贈るものだから、シンプルな方がむしろいいと思う。





「勝手にこんな事やってしまってごめんなさいっ…!裸のままだとプレゼントって感じがしないので、来る前に材料を買って来て私なりにラッピングしてみました!」

「すごい!ありがとう!!すっごく助かっちゃった!!!」


私…裁縫とか料理とかは好きだけど、ラッピングって上手く出来ないんだよね…

それに箱ものを包むなんて余計に無理。難しくて何度も何度もやり直すことになるんだよなぁ…







「みんな本当に本当にありがとね!」


私がそう言うと、3人は優しく微笑んでくれた。







♪♪♪~



その時ポケットに入れていた私のスマホが鳴り、私は慌ててスマホを出した。画面には「凌哉くん」と名前が表示されている。




凌哉くんから電話だ!





「ちょっと電話してくるね」

「はいよ~」



私は多美子ちゃんの部屋から廊下に出ると、急いで電話に出る。







「もしもし??」

「…沙世?今どこにいる?」


本日初めて聞く凌哉くんの声に、胸がきゅんと高鳴った…






「あ、えっと…多美子ちゃんちにみんなでいるよ!」

「え?東野(ひがしの)の家?」


多美子ちゃんの苗字は東野だ。





「うん、そうなの!みんなで宿題やってて…」


これから凌哉くんと会うから、気合い入れてメイクとかしてもらってたなんてさすがに言えないや…
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